お子さまの歯並びを見て、「前歯が出てきた気がする」「口がいつもポカンと開いている」「指しゃぶりがなかなかやめられない」と感じたことはありませんか。
子どもの歯並びは、あごの大きさや歯の大きさといった遺伝的な要素だけで決まるわけではありません。日常の中で無意識に続けている、口呼吸・舌癖・指しゃぶりなどの口まわりの癖が、歯並びや噛み合わせに影響することがあります。
子どもの歯並びは「遺伝」だけで決まるわけではありません
お子さまの歯並びを見て、次のように感じたことはありませんか。
- ✓ 前歯が出てきた気がする
- ✓ 口がいつもポカンと開いている
- ✓ 指しゃぶりがなかなかやめられない
- ✓ 飲み込むときに舌が前に出ている気がする
- ✓ このまま歯並びが悪くならないか心配
子どもの歯並びは、あごの大きさや歯の大きさといった遺伝的な要素だけで決まるわけではありません。
日常の中で無意識に続けている、口呼吸・舌癖・指しゃぶりなどの口まわりの癖が、歯並びや噛み合わせに影響することがあります。
日本歯科医師会も、口腔習癖と不正咬合には関連が深く、舌の前方突出や口呼吸があると、口唇閉鎖が難しくなり、上顎前突や開咬につながることがあると説明しています。
大切なのは、癖があるからといってすぐに叱ったり、無理にやめさせたりすることではありません。まずは、どのような癖が歯並びに影響しやすいのかを知り、お子さまの成長段階に合わせて適切に見守ることが大切です。
口呼吸とは?いつも口が開いている状態に注意
口呼吸とは、鼻ではなく口で呼吸する習慣のことです。
子どもがテレビを見ているとき、寝ているとき、集中しているときなどに、口がポカンと開いている場合は、口呼吸になっている可能性があります。
口呼吸が続くと、唇を閉じる力が弱くなったり、舌の位置が下がったりすることがあります。本来、舌は上あごに軽くついている状態が望ましいとされますが、口が開いた状態が続くと、舌が下がりやすくなり、歯並びやあごの成長に影響することがあります。
Children’s Wisconsinでは、口呼吸が続くと、歯のガタつき、歯列の狭まり、歯並びの乱れなどにつながる可能性があると説明されています。
口呼吸で見られやすいサイン
次のような様子がある場合は、口呼吸の可能性があります。
- ✓ 口がいつも少し開いている
- ✓ 唇が乾きやすい
- ✓ 寝ているときに口が開いている
- ✓ いびきをかく
- ✓ 朝起きたときに口が乾いている
- ✓ 食事中にクチャクチャ音がしやすい
- ✓ 風邪をひいていないのに鼻が詰まりやすい
- ✓ 前歯が出てきたように見える
もちろん、口が開いているからといって、必ず歯並びが悪くなるわけではありません。
ただし、口呼吸が長く続いている場合は、歯科だけでなく、鼻づまりやアレルギー性鼻炎などが関係していないか、耳鼻科での確認が必要になることもあります。
舌癖とは?舌で歯を押す癖のこと
舌癖とは、飲み込むときや話すときに、舌で前歯を押したり、上下の前歯の間に舌を出したりする癖のことです。
たとえば、飲み込むときに舌が前に出る、発音するときに舌が歯の間から見える、安静時に舌が下の方にある、といった状態です。
舌はやわらかい筋肉ですが、毎日何度も同じ方向に力がかかることで、歯並びに影響することがあります。
とくに、舌で前歯を押す癖が続くと、前歯が噛み合わない「開咬」や、前歯が前に出る状態につながる場合があります。
小児歯科関連の資料でも、指しゃぶりによって上下の前歯の間にすき間ができると、そのすき間に舌を押し込んだり、飲み込むときに舌で歯を押す癖が出やすくなると説明されています。
舌癖で見られやすいサイン
舌癖がある場合、次のような様子が見られることがあります。
- ✓ 飲み込むときに舌が前に出る
- ✓ 話すときに舌が歯の間から見える
- ✓ サ行・タ行・ナ行・ラ行が聞き取りにくい
- ✓ 前歯が噛み合っていない
- ✓ いつも舌が下の前歯の裏にある
- ✓ 口が開いていることが多い
- ✓ 食べ物を飲み込むのが遅い
- ✓ 食事中に口元が動きすぎる
舌癖は、本人も保護者の方も気づきにくいことがあります。
「歯並びが悪いから舌癖が出ている」のか、「舌癖があるから歯並びに影響している」のか、どちらか一方だけで判断するのは難しい場合もあります。
そのため、歯並びとあわせて、舌の動きや飲み込み方、発音の様子を確認することが大切です。
指しゃぶりは何歳まで見守ってよい?
指しゃぶりは、乳幼児期によく見られる自然な行動です。
赤ちゃんや小さなお子さまにとって、指しゃぶりは安心感を得るための行動でもあります。そのため、低年齢の指しゃぶりを必要以上に心配しすぎる必要はありません。
小児科と小児歯科の検討委員会による資料では、生後12か月頃までの指しゃぶりは発達過程における生理的な行為として経過を見てよいとされ、3歳頃までは特に禁止する必要がないことを保護者に伝えることが大切だとされています。
一方で、指しゃぶりが長く続く場合は、歯並びや噛み合わせに影響することがあります。
同資料では、指しゃぶりを続けるほど歯並びや噛み合わせに影響が出やすく、上の前歯が前に出る上顎前突、上下の前歯の間にすき間ができる開咬、奥歯の噛み合わせが横にずれる交叉咬合などが挙げられています。
4〜5歳を過ぎても続く場合は相談の目安
指しゃぶりは、3歳頃までは成長の一過程として見守ることが多い一方、4〜5歳を過ぎても頻繁に続く場合は注意が必要です。
小児歯科の立場では、4〜5歳を過ぎた指しゃぶりは、歯並びや噛み合わせだけでなく、発音、飲み込み、口元の突出、あごの発育にも影響する可能性があるため、指導した方がよいという意見が多いとされています。
ただし、指しゃぶりをやめさせるときは、強く叱るのではなく、生活環境や心理面も含めて見ていくことが大切です。
指しゃぶりは、眠いとき、不安なとき、退屈なとき、甘えたいときに出やすいことがあります。
「やめなさい」と叱るだけでは、かえって不安が強くなり、癖が続いてしまうこともあります。
お子さまの口の癖が気になる方へ
口呼吸・舌癖・指しゃぶりは、歯並びや噛み合わせに影響することがあります。まずは現在の状態を確認し、経過観察でよいのか、早めに対応した方がよいのか相談しましょう。
口呼吸・舌癖・指しゃぶりはつながっていることがあります
口呼吸、舌癖、指しゃぶりは、それぞれ別々の癖に見えます。しかし実際には、これらがつながっていることもあります。
たとえば、指しゃぶりが長く続くと、前歯が噛み合わない状態になることがあります。前歯の間にすき間ができると、そこに舌が入りやすくなり、舌癖が出やすくなります。
また、前歯が前に出て唇を閉じにくくなると、口が開きやすくなり、口呼吸につながることもあります。
指しゃぶり
↓
前歯が出る・前歯が噛み合わない
↓
舌が前に出やすくなる
↓
口が閉じにくくなる
口呼吸になりやすい
小児歯科関連の資料でも、指しゃぶりによる咬合の異常によって、舌癖、口呼吸、構音障害が起こりやすくなると説明されています。
そのため、歯並びだけを見て判断するのではなく、口の閉じ方、舌の位置、飲み込み方、呼吸の仕方、指しゃぶりの頻度などを総合的に確認することが大切です。
口の癖が歯並びに与えやすい影響
口呼吸・舌癖・指しゃぶりが長く続くと、次のような歯並びや噛み合わせにつながることがあります。
指しゃぶりや口呼吸によって唇を閉じる力が弱くなると、前歯が前に出やすくなることがあります。
奥歯で噛んだときに前歯が噛み合わず、すき間ができる状態です。指しゃぶりや舌癖が関係することがあります。
上下の歯の噛み合わせが横にずれている状態です。あごの左右差や噛み方の癖につながる場合があります。
口呼吸により舌の位置が下がると、あごの成長や歯が並ぶスペースに影響することがあります。
出っ歯
上の前歯が前に出ている状態です。
指しゃぶりで上の前歯に前方への力がかかったり、唇を閉じる力が弱くなったりすると、前歯が前に出やすくなることがあります。
出っ歯は見た目だけでなく、転倒時に前歯をぶつけやすい、口が閉じにくい、唇が乾きやすいといった問題につながることもあります。
開咬
奥歯で噛んだときに、上下の前歯が噛み合わず、すき間ができている状態です。
指しゃぶりや舌癖が関係していることがあります。
開咬があると、前歯で食べ物を噛み切りにくい、発音がしにくい、舌が前に出やすいといった問題につながることがあります。
交叉咬合
上下の歯の噛み合わせが横にずれている状態です。
指しゃぶりや口呼吸、舌の位置、あごの成長バランスなどが関係することがあります。
交叉咬合は、あごの左右差や噛み方の癖につながる場合があるため、早めに確認した方がよいことがあります。
歯のガタガタ
口呼吸によって舌の位置が下がり、上あごの成長が十分に広がらない場合、歯が並ぶスペースが不足し、歯のガタガタにつながることがあります。
もちろん、歯の大きさやあごの大きさにも個人差があるため、すべてが口の癖だけで決まるわけではありません。しかし、口まわりの使い方が歯並びに影響することはあります。
家庭で確認したいチェックポイント
お子さまの口呼吸・舌癖・指しゃぶりが気になる場合は、次のポイントを確認してみましょう。
普段の口元
何もしていないときに、唇が自然に閉じているかを見てみましょう。
テレビを見ているとき、ゲームをしているとき、勉強しているときなど、集中している場面で口が開いている場合は、口呼吸や口まわりの筋力の弱さが関係している可能性があります。
寝ているときの様子
寝ているときに口が開いている、いびきをかく、朝起きたときに口が乾いている場合は、鼻呼吸がしにくい状態かもしれません。
鼻づまりやアレルギーが関係していることもあるため、必要に応じて耳鼻科で相談しましょう。
食事中の様子
食べ物を噛むときに口が開いている、クチャクチャ音がする、飲み込むときに舌が前に出る、食べるのに時間がかかるといった様子がないか確認しましょう。
食事中の口の動きには、舌や唇、頬の筋肉の使い方が現れます。
発音
サ行、タ行、ナ行、ラ行などが聞き取りにくい場合、舌の位置や動きが関係していることがあります。
小児歯科関連の資料でも、舌癖がある子どもは、前歯のすき間に舌が入ることで、サ行・タ行・ナ行・ラ行などが舌足らずな発音になることがあると説明されています。
指しゃぶりの頻度
指しゃぶりが、眠いときだけなのか、日中も頻繁にしているのかを確認しましょう。
また、吸う力が強い、指にタコができている、歯並びに変化が出ている、4〜5歳を過ぎても頻繁に続いている場合は、相談の目安になります。
家庭でできる対応は「叱る」より「環境を整える」こと
口呼吸・舌癖・指しゃぶりが気になると、つい「やめなさい」と言いたくなるかもしれません。
しかし、子どもの癖は、本人が無意識にしていることが多く、叱るだけでは改善しにくい場合があります。
特に指しゃぶりは、安心したい、眠い、不安、退屈などの気持ちと結びついていることがあります。
指しゃぶりへの対応
指しゃぶりをやめさせたいときは、まず叱らずに、どのような場面で出ているのかを観察しましょう。
眠る前に多い場合は、手を握ってあげる、絵本を読む、安心できる入眠習慣をつくるなどの方法があります。
退屈なときに出る場合は、手を使う遊びを増やすことも有効です。
小児科と小児歯科の検討委員会の資料でも、3歳頃までは特に禁止する必要がないことを伝えると同時に、生活リズムを整え、外遊びや運動でエネルギーを発散させたり、手や口を使う機会を増やしたりすることが大切だとされています。
口呼吸への対応
口呼吸の場合は、まず鼻で呼吸しにくい原因がないかを確認することが大切です。
アレルギー性鼻炎、慢性的な鼻づまり、扁桃やアデノイドの問題などがある場合、歯科だけでは対応できないこともあります。
そのため、口がいつも開いている、いびきがある、鼻づまりが続いている場合は、歯科とあわせて耳鼻科への相談も検討しましょう。
舌癖への対応
舌癖は、本人が自覚しにくい癖です。
「舌を出さないで」と言っても、飲み込むときや話すときに無意識に出てしまうことがあります。
歯科医院では、舌の位置や飲み込み方、口まわりの筋肉の使い方を確認し、必要に応じてトレーニングを行うことがあります。
自己流で無理に直そうとするよりも、歯並びや噛み合わせの状態とあわせて確認することが大切です。
早めに相談した方がよいケース
次のような場合は、早めに歯科医院で相談することをおすすめします。
- ✓ 口がいつも開いている
- ✓ 鼻づまりがないのに口呼吸をしている
- ✓ 前歯が出てきた
- ✓ 奥歯で噛んでも前歯が噛み合わない
- ✓ 飲み込むときに舌が前に出る
- ✓ 発音が気になる
- ✓ 4〜5歳を過ぎても指しゃぶりが頻繁に続いている
- ✓ 指しゃぶりの吸う力が強い
- ✓ 歯並びや噛み合わせに変化が出てきた
- ✓ 学校や園の歯科健診で歯並びを指摘された
相談したからといって、必ずすぐに矯正治療が必要になるわけではありません。
- ✓ 今は経過観察でよい
- ✓ まずは癖の改善を優先しましょう
- ✓ 成長を見ながらタイミングを判断しましょう
- ✓ 小児矯正を検討した方がよい状態です
このように、お子さまの状態に合わせて判断することが大切です。
小児矯正は歯を並べるだけでなく、口の使い方を見ることも大切です
子どもの矯正では、歯をきれいに並べることだけが目的ではありません。
成長期の子どもは、あごの発育、舌の位置、唇の力、呼吸、飲み込み方、発音、指しゃぶりなど、さまざまな要素が歯並びに関係します。
そのため、歯並びだけを見て「矯正するかどうか」を判断するのではなく、口まわりの機能や癖まで含めて確認することが重要です。
口呼吸・舌癖・指しゃぶりがある場合、矯正装置で歯を動かしても、原因となる癖が残っていると、歯並びが安定しにくいことがあります。
矯正治療を考えるときは、次の点も確認しましょう。
- ✓ なぜ歯並びが乱れているのか
- ✓ 口呼吸はないか
- ✓ 舌の位置は正しいか
- ✓ 飲み込み方に癖はないか
- ✓ 指しゃぶりが続いていないか
- ✓ 鼻呼吸ができているか
まとめ|口呼吸・舌癖・指しゃぶりは、早めに気づくことが大切です
口呼吸・舌癖・指しゃぶりは、子どもによく見られる口まわりの癖です。
小さいうちは成長過程の一部として見守ってよいものもありますが、長く続く場合は、歯並びや噛み合わせに影響することがあります。
- ✓ 口呼吸は、唇を閉じる力や舌の位置に関係することがあります。
- ✓ 舌癖は、前歯を押したり、開咬や発音に関係したりすることがあります。
- ✓ 指しゃぶりは、上顎前突、開咬、交叉咬合などにつながる場合があります。
大切なのは、癖を見つけたときに強く叱ることではありません。
お子さまの年齢、癖の頻度、歯並びの状態、生活環境、心理面などをふまえて、無理のない方法で対応することが大切です。
「口がいつも開いている」「指しゃぶりがなかなかやめられない」「舌が前に出ている気がする」「歯並びが悪くなってきたかもしれない」というサインがある場合は、まずは一度、歯科医院で相談してみましょう。
早めに状態を確認することで、今すぐ治療が必要なのか、経過観察でよいのか、生活習慣や口の使い方から見直すべきなのかを判断しやすくなります。
この記事の監修・執筆協力
上野スマイル歯科 院長
日本大学松戸歯学部卒業後、日本大学松戸歯学部矯正学教室に入局。1999年に日本矯正歯科学会認定医を取得し、2014年より上野スマイル歯科院長として矯正歯科治療に携わっています。
東京矯正歯科学会
マウスピース矯正
舌側矯正・MFT など
累計実績 約4,000件
2019年 インビザライン プラチナドクター
子どもの矯正では、歯並びだけでなく、あごの成長、呼吸、舌の位置、飲み込み方、指しゃぶりなどの習癖まで含めて確認することが大切です。口の癖が気になる場合は、まず現在の状態を確認し、お子さまに合った対応を検討しましょう。
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