アライナー矯正は、透明に近いマウスピース型の装置を使って歯を動かす矯正治療です。装置が目立ちにくく、食事や歯みがきのときに取り外せるため、成人矯正でも選ばれやすい治療方法です。
一方で、アライナー矯正はすべての症例に向いているわけではありません。歯並びや噛み合わせの状態によっては、ワイヤー矯正や補助装置、先行治療が必要になる場合があります。
アライナー矯正は誰でもできる治療ではありません
アライナー矯正は、透明に近いマウスピース型の装置を使って歯を動かす矯正治療です。
装置が目立ちにくく、食事や歯みがきのときに取り外せるため、次のような方に選ばれやすい治療方法です。
- ✓ ワイヤー矯正は目立つから抵抗がある
- ✓ 仕事中に矯正装置を見せたくない
- ✓ できればマウスピースで矯正したい
- ✓ アライナー矯正で自分の歯並びも治せるのか知りたい
一方で、アライナー矯正はすべての歯並びに対応できるわけではありません。
アメリカ矯正歯科学会も、クリアアライナーは目立ちにくく取り外しできる一方で、重度の不正咬合、大きな歯の回転、大きなすき間などでは、ワイヤー矯正の方がより精密に対応できる場合があると説明しています。
つまり、アライナー矯正は便利で見た目に配慮しやすい治療ですが、症例によっては次のような判断になる場合があります。
- ✓ アライナー矯正だけでは難しい
- ✓ ワイヤー矯正の方が適している
- ✓ アライナーとワイヤーの併用が必要
- ✓ 先にむし歯や歯周病の治療が必要
- ✓ 治療計画を慎重に立てる必要がある
この記事では、アライナー矯正ができない、または難しいと判断されやすい症例と、その場合の選択肢についてわかりやすく解説します。
「マウスピース矯正ができるかどうか」は、見た目だけでは判断できません。歯の根、骨格、奥歯の噛み合わせ、歯周病の状態、装着時間を守れるかまで含めて確認することが大切です。
「アライナー矯正ができない」とはどういう意味?
まず大切なのは、「アライナー矯正ができない」という言葉には、いくつかの意味があるということです。
たとえば、次のようなケースがあります。
- ✓ 完全にアライナー矯正の適応外である
- ✓ アライナー矯正だけでは理想的な仕上がりが難しい
- ✓ アライナー矯正でもできるが、治療期間が長くなりやすい
- ✓ ワイヤー矯正を併用した方がよい
- ✓ 事前に歯周病やむし歯治療が必要
- ✓ 患者さんの装着時間が守れないと難しい
状態によって判断は異なるため、ネット上の情報だけを見て「自分はアライナー矯正できない」と決めつける必要はありません。
一方で、「どんな歯並びでもマウスピースだけで治せる」と考えるのも注意が必要です。
矯正治療では、見た目の歯並びだけでなく、奥歯の噛み合わせ、歯の根の位置、あごの骨格、歯周病の有無、歯を動かせるスペースなどを確認したうえで、治療方法を判断します。
アライナー矯正が難しい症例
ここからは、アライナー矯正だけでは難しい、または慎重な判断が必要になりやすい症例を紹介します。
歯が並ぶスペースが大きく不足している場合、アライナーだけでは歯の移動をコントロールしにくいことがあります。
抜歯でできた大きなスペースを閉じる治療では、歯の傾きや歯根の位置まで細かく管理する必要があります。
歯の形や位置によっては、アライナーが歯をつかみにくく、回転の改善が難しいことがあります。
前歯だけでなく、奥歯の噛み合わせを大きく変える必要がある場合は慎重な治療計画が必要です。
アライナー矯正が難しい症例1|歯のガタガタが強い
歯の重なりが強く、歯が並ぶスペースが大きく不足している場合、アライナー矯正だけでは難しいことがあります。
たとえば、次のようなケースです。
- ✓ 前歯が大きく重なっている
- ✓ 歯が内側や外側に大きくズレている
- ✓ 歯列のアーチが極端に狭い
- ✓ 永久歯が並ぶスペースが大きく足りない
- ✓ 抜歯をしないと歯が並ばない可能性が高い
軽度から中等度のガタつきであれば、アライナー矯正が選択肢になることがあります。
しかし、重度の叢生、つまり歯のガタガタが強い場合は、歯を大きく移動させる必要があり、アライナーだけでは歯の動きを十分にコントロールしにくいことがあります。
研究レビューでも、アライナー矯正は審美性や清掃性などのメリットがある一方、複雑な歯の移動では固定式装置に比べて限界があることが示されています。
このような場合は、ワイヤー矯正の方が適していることがあります。また、最初にワイヤー矯正で大きく歯を動かし、その後にアライナー矯正で仕上げるという方法が検討されることもあります。
アライナー矯正が難しい症例2|抜歯を伴う大きな歯の移動が必要
矯正治療では、歯を並べるスペースを作るために抜歯が必要になる場合があります。
特に、次のような場合は抜歯矯正が検討されることがあります。
- ✓ 口元の突出感を大きく改善したい
- ✓ 前歯を大きく後ろに下げたい
- ✓ 歯のガタガタが強い
- ✓ 上下の噛み合わせを大きく変える必要がある
- ✓ 小臼歯を抜歯してスペースを作る必要がある
アライナー矯正でも抜歯症例に対応できる場合はあります。
ただし、抜歯でできた大きなスペースを閉じる治療では、歯の傾き、歯根の位置、奥歯の固定、前歯の移動量などを細かくコントロールする必要があります。
このような大きな移動では、ワイヤー矯正の方が歯の動きを管理しやすい場合があります。
アライナー矯正だけで対応する場合でも、アタッチメント、顎間ゴム、アンカースクリュー、追加アライナーなどが必要になることがあります。
「抜歯が必要=アライナー矯正は絶対にできない」ではありません。ただし、抜歯を伴う症例では、治療の難易度が上がるため、診断と治療計画が非常に重要です。
アライナー矯正が難しい症例3|歯のねじれや回転が大きい
歯が大きくねじれている場合も、アライナー矯正では難しいことがあります。
たとえば、次のようなケースです。
- ✓ 犬歯が大きく回転している
- ✓ 小臼歯が横向きに近い状態で生えている
- ✓ 前歯が大きくねじれている
- ✓ 歯の向きを大きく変える必要がある
アライナーは、歯に密着するマウスピースの力で歯を動かします。
軽度の回転であれば対応できることがありますが、歯の形や位置によっては、アライナーが歯をつかみにくく、計画通りに回転を改善しにくい場合があります。
アメリカ矯正歯科学会も、大きな歯の回転がある場合、クリアアライナーでは予測性が下がり、従来のワイヤー矯正の方が精密に対応できる場合があると説明しています。
このような場合は、アタッチメントをつけて歯を動かしやすくしたり、ワイヤー矯正を併用したりすることがあります。
アライナー矯正が難しい症例4|奥歯の噛み合わせを大きく変える必要がある
アライナー矯正は、前歯の見た目を整える治療というイメージを持たれることがあります。
しかし、矯正治療では前歯だけでなく、奥歯の噛み合わせも重要です。
奥歯の噛み合わせが大きくズレている場合、アライナー矯正だけでは難しいことがあります。
たとえば、次のようなケースです。
- ✓ 上下の奥歯の噛み合わせが大きくズレている
- ✓ 左右で噛み合わせが違う
- ✓ 奥歯の位置を大きく動かす必要がある
- ✓ 上下の顎の関係にズレがある
- ✓ 噛んだときに一部の歯だけ強く当たる
見た目の前歯だけを整えても、奥歯の噛み合わせが合っていなければ、噛みにくさや後戻りの原因になることがあります。
そのため、奥歯の噛み合わせまで大きく治す必要がある場合は、ワイヤー矯正や顎間ゴム、アンカースクリューなどを含めた治療計画が必要になることがあります。
アライナー矯正ができるか知りたい方へ
見た目だけでは、マウスピース矯正で対応できるか判断できません。奥歯の噛み合わせや歯の根の位置まで確認することが大切です。
骨格や噛み合わせに関わる難しい症例
あごの骨格が大きく関係している場合、歯を動かすだけでは改善に限界があります。
前歯が噛み合わない状態で、舌癖や口呼吸、骨格的な問題が関係している場合は慎重な判断が必要です。
噛み合わせが非常に深い場合、奥歯の高さや前歯の位置まで含めたコントロールが必要です。
骨や歯ぐきの中に埋まっている歯は、アライナーだけで直接引っ張り出すことが難しい場合があります。
アライナー矯正が難しい症例5|骨格的な受け口・出っ歯がある
歯並びの問題に見えても、実際にはあごの骨格が関係している場合があります。
たとえば、次のようなケースです。
- ✓ 下あごが前に出ている受け口
- ✓ 上あごが大きく前に出ている出っ歯
- ✓ 下あごが小さく後ろに下がっている
- ✓ 上下のあごのズレが大きい
- ✓ 横顔や口元の骨格的なズレが強い
このような骨格的な問題が強い場合、歯を動かすだけでは改善に限界があります。
アメリカ歯科医師会も、歯がまっすぐに見えても、上下の顎が正しく合っていない場合があり、歯や顎の配列の問題は遺伝、けが、歯の喪失、指しゃぶりなどによって起こることがあると説明しています。
骨格的な受け口や出っ歯では、アライナー矯正だけで見た目や噛み合わせを大きく改善することが難しい場合があります。
症例によっては、ワイヤー矯正、外科的矯正治療、成長期の小児矯正などが検討されます。
特に大人の場合は、あごの成長が完了しているため、骨格そのものを大きく変えることはできません。そのため、歯を動かすだけで対応できる範囲なのか、外科的な治療が必要なのかを慎重に判断する必要があります。
アライナー矯正が難しい症例6|重度の開咬
開咬とは、奥歯で噛んだときに上下の前歯が噛み合わず、すき間ができている状態です。
次のような問題につながることがあります。
- ✓ 前歯で食べ物を噛み切りにくい
- ✓ 発音しにくい
- ✓ 舌が前に出やすい
- ✓ 口が閉じにくい
- ✓ 奥歯ばかりに負担がかかる
軽度の開咬であれば、アライナー矯正が選択肢になることもあります。
しかし、重度の開咬や、舌癖・口呼吸・骨格的な問題が関係している開咬では、アライナー矯正だけでは難しいことがあります。
開咬は、歯並びだけでなく、舌の位置、飲み込み方、口呼吸、あごの成長、奥歯の高さなど複数の要因が関係します。
そのため、単に前歯を動かすだけではなく、原因となる癖や噛み合わせ全体を確認する必要があります。
アライナー矯正が難しい症例7|重度の過蓋咬合
過蓋咬合とは、噛んだときに上の前歯が下の前歯を深く覆いすぎる状態です。いわゆる「噛み合わせが深い」状態です。
軽度の過蓋咬合であれば、アライナー矯正で対応できる場合があります。
しかし、噛み合わせが非常に深い場合は、次のような理由でアライナー矯正だけでは難しいことがあります。
- ✓ 下の前歯が上の歯ぐきに当たる
- ✓ 奥歯の高さや前歯の位置を大きく調整する必要がある
- ✓ 顎関節や前歯に負担がかかっている
- ✓ 噛み合わせ全体のコントロールが必要
過蓋咬合では、前歯の位置だけでなく、奥歯の高さや噛み合わせのバランスを整える必要があります。
ワイヤー矯正の方がコントロールしやすい場合や、アライナーと補助装置を併用する場合があります。
アライナー矯正が難しい症例8|埋伏歯がある
埋伏歯とは、歯が骨や歯ぐきの中に埋まったまま、正常に生えてこない状態です。
特に犬歯や親知らずで見られることがあります。
埋伏歯がある場合、その歯を引っ張り出す必要があるか、抜歯する必要があるか、経過観察でよいかを判断します。
歯を引っ張り出して歯列に並べる場合、ワイヤーや外科的処置を併用することがあります。
アライナー矯正だけでは、埋まっている歯を直接つかんで引っ張ることが難しいため、対応が難しくなることがあります。
ただし、埋伏歯の位置や状態によって判断は異なります。レントゲンやCTなどで歯の位置を確認し、治療計画を立てる必要があります。
お口の状態によってアライナー矯正が難しいケース
歯ぐきや骨が炎症を起こしている状態では、歯を動かす前に歯周病治療が必要です。
矯正開始後に歯の形が変わると、アライナーが合わなくなることがあります。
インプラントは矯正治療で動かせないため、位置によって治療計画に制限が出ることがあります。
ブリッジは複数の歯がつながっているため、それぞれの歯を個別に動かすことができません。
アライナー矯正が難しい症例9|歯周病が進行している
歯周病が進行している場合、アライナー矯正をすぐに始めることはできない場合があります。
矯正治療は、歯に力をかけて動かす治療です。
歯を支える骨や歯ぐきが炎症を起こしている状態で歯を動かすと、歯周病が悪化したり、歯の揺れが強くなったりするリスクがあります。
特に、次のような場合は、まず歯周病治療を優先する必要があります。
- ✓ 歯ぐきから出血する
- ✓ 歯がグラグラする
- ✓ 歯周ポケットが深い
- ✓ 歯を支える骨が大きく減っている
- ✓ 歯ぐきが腫れている
- ✓ 口臭が強い
アライナー矯正は取り外しができるため歯みがきしやすい面もありますが、歯周病がコントロールされていない状態で始めてよいわけではありません。
歯周病がある方は、歯周病の状態を安定させたうえで、矯正治療が可能か判断します。
アライナー矯正が難しい症例10|むし歯が多い・治療中の歯が多い
むし歯が多い場合や、治療途中の歯がある場合も、アライナー矯正をすぐに始めるのは難しいことがあります。
アライナーは歯にぴったり合うように作られます。
そのため、矯正開始後に大きなむし歯治療を行い、歯の形が変わると、アライナーが合わなくなることがあります。
また、むし歯がある状態でアライナーを長時間装着すると、汚れや糖分が歯に密着しやすくなり、むし歯の悪化につながる可能性があります。
アメリカ矯正歯科学会も、アライナーは飲食物の粒子や液体を閉じ込める可能性があり、清掃が不十分な場合はむし歯や歯周病のリスクにつながることがあると説明しています。
そのため、アライナー矯正を始める前には、むし歯や詰め物・被せ物の状態を確認し、必要な治療を済ませておくことが大切です。
アライナー矯正が難しい症例11|インプラントがある
インプラントが入っている場合も、治療計画に注意が必要です。
天然の歯は、矯正力をかけると少しずつ動かすことができます。
しかし、インプラントは骨と結合しているため、矯正治療で動かすことはできません。
そのため、インプラントが入っている位置によっては、アライナー矯正の計画に制限が出ることがあります。
たとえば、次のような場合です。
- ✓ インプラントの位置が理想的でない
- ✓ インプラント周囲の歯を大きく動かす必要がある
- ✓ 噛み合わせを大きく変える必要がある
- ✓ インプラントを基準に歯並びを整える必要がある
インプラントがあるからといって、必ずアライナー矯正ができないわけではありません。
ただし、インプラントは動かせない歯として扱うため、治療計画を慎重に立てる必要があります。
アライナー矯正が難しい症例12|被せ物・ブリッジが多い
被せ物やブリッジが多い場合も注意が必要です。
アライナー矯正では、歯の表面にアタッチメントをつけることがあります。
しかし、被せ物の材質によっては、アタッチメントがつきにくいことがあります。
また、ブリッジは複数の歯がつながっているため、それぞれの歯を個別に動かすことができません。
そのため、次のような場合は、アライナー矯正が難しくなることがあります。
- ✓ 前歯に大きな被せ物がある
- ✓ 奥歯にブリッジが入っている
- ✓ 複数の歯が連結されている
- ✓ 被せ物の形がアライナーのフィットに影響する
このようなケースでは、補綴治療と矯正治療の順番を考える必要があります。
場合によっては、矯正後に被せ物を作り直すこともあります。
生活習慣や管理面でアライナー矯正が難しいケース
アライナーに強い力がかかり、ヒビ・割れ・すり減りなどが起こることがあります。
取り外しできることはメリットですが、外したままの時間が長いと歯が計画通りに動きません。
診査や経過確認が不十分だと、噛み合わせや歯ぐきに問題が起こるリスクがあります。
アライナー矯正が難しい症例13|歯ぎしり・食いしばりが強い
歯ぎしりや食いしばりが強い方は、アライナーに強い力がかかることがあります。
その結果、次のようなトラブルが起こることがあります。
- ✓ アライナーにヒビが入る
- ✓ アライナーが割れる
- ✓ 奥歯部分がすり減る
- ✓ 穴があく
- ✓ 装着感が変わる
- ✓ 歯や顎に負担がかかる
歯ぎしり・食いしばりがあるからといって、必ずアライナー矯正ができないわけではありません。
ただし、強いブラキシズムがある場合は、装置の破損リスクや顎関節への負担、治療後のリテーナー管理まで含めて考える必要があります。
朝起きたときに顎が疲れている方、家族に歯ぎしりを指摘された方、歯がすり減っている方は、矯正相談時に必ず伝えましょう。
アライナー矯正が難しい症例14|装着時間を守れない
アライナー矯正は、患者さん自身の協力度が非常に重要な治療です。
取り外しができることはメリットですが、外したままの時間が長いと歯が計画通りに動きません。
インビザラインでは、通常1日20〜22時間の装着が推奨されています。
つまり、食事と歯みがき以外の時間は、基本的に装着して過ごす必要があります。
装着時間が不足すると、次のようなことがあります。
- ✓ 歯が計画通りに動かない
- ✓ 次のアライナーが入らない
- ✓ 治療期間が延びる
- ✓ 追加アライナーが必要になる
- ✓ 仕上がりに影響する
アメリカ矯正歯科学会も、クリアアライナーは患者さんが一貫して装着する必要があり、装着が不十分だと治療期間が延びたり、結果に影響したりすると説明しています。
そのため、間食が多い方、外食が多い方、外したまま忘れやすい方、マウスピースをなくしやすい方、自己管理が苦手な方、仕事柄長時間外す必要がある方は、アライナー矯正が向いていない可能性があります。
この場合は、患者さんが取り外せないワイヤー矯正の方が、治療を進めやすいことがあります。
アライナー矯正が難しい症例15|自己判断で進めるオンライン矯正
最近は、通院回数を少なくしたアライナー矯正や、オンライン中心の矯正サービスを目にすることがあります。
ただし、矯正治療は歯を動かす医療行為です。
見た目の歯並びだけでなく、歯の根、骨、歯周病、むし歯、噛み合わせ、顎関節などを確認する必要があります。
アライナー矯正では、治療途中で歯が計画通りに動いているか、噛み合わせに問題が出ていないか、歯ぐきに異常がないかをチェックすることが大切です。
専門家による診査や経過確認が不十分なまま進めると、次のようなリスクがあります。
- ✓ 噛み合わせが悪くなる
- ✓ 歯ぐきが下がる
- ✓ 歯に無理な力がかかる
- ✓ むし歯や歯周病に気づきにくい
- ✓ 治療途中でアライナーが合わなくなる
アライナー矯正を検討する場合は、費用や手軽さだけでなく、診断と管理体制も確認することが大切です。
マウスピース矯正だけで難しいと言われた方へ
アライナー矯正が難しい場合でも、ワイヤー矯正や併用治療など、別の方法で対応できることがあります。まずは治療の選択肢を確認しましょう。
アライナー矯正ができないと言われた場合の選択肢
アライナー矯正が難しいと言われても、矯正治療そのものを諦める必要はありません。
症例によっては、別の治療方法や組み合わせによって対応できる場合があります。
歯の移動を細かくコントロールしやすく、重度のガタガタや抜歯症例にも対応しやすい方法です。
歯の裏側に装置をつけるため、見た目に配慮しながらワイヤー矯正を行える場合があります。
難しい移動だけワイヤーを使い、その後アライナーで仕上げる方法が検討されることがあります。
むし歯・歯周病治療を先に行ったり、無理のない範囲で治療ゴールを調整したりします。
ワイヤー矯正を選択する
アライナー矯正が難しい場合、最も一般的な代替案はワイヤー矯正です。
ワイヤー矯正は、歯にブラケットをつけ、ワイヤーの力で歯を動かす方法です。
アライナー矯正に比べて装置は目立ちやすいですが、次のようなメリットがあります。
- ✓ 歯の移動を細かくコントロールしやすい
- ✓ 重度のガタガタにも対応しやすい
- ✓ 抜歯症例に対応しやすい
- ✓ 歯の回転や傾きを調整しやすい
- ✓ 患者さんの装着時間に左右されにくい
アメリカ歯科医師会も、矯正治療ではブラケットとワイヤーを使って歯や顎を少しずつ動かす方法があり、不正咬合の治療に用いられると説明しています。
目立ちにくさを重視する場合は、白いブラケットや目立ちにくいワイヤーを選べることもあります。
裏側矯正を検討する
「ワイヤー矯正は必要だけれど、装置を見せたくない」という方には、裏側矯正が選択肢になることがあります。
裏側矯正は、歯の裏側に装置をつける矯正方法です。
正面から装置が見えにくいため、見た目に配慮しながらワイヤー矯正を行えます。
ただし、次のような注意点があります。
- ✓ 費用が高くなりやすい
- ✓ 発音に慣れが必要
- ✓ 舌に違和感が出やすい
- ✓ 歯みがきが難しくなる
- ✓ 対応できる医院が限られる
アライナー矯正は難しいけれど、目立たない治療を希望する場合は、裏側矯正について相談してみるのもよいでしょう。
アライナー矯正とワイヤー矯正を併用する
症例によっては、アライナー矯正とワイヤー矯正を組み合わせる方法があります。
たとえば、次のような方法です。
- ✓ 最初にワイヤーで大きく歯を動かす
- ✓ 途中からアライナーで仕上げる
- ✓ 一部の歯だけワイヤーを使う
- ✓ 難しい歯の移動だけ補助装置を使う
「全部をアライナーで治すのは難しいけれど、一部なら使える」というケースもあります。
見た目の負担をできるだけ抑えながら、治療の確実性も高めたい場合に検討されることがあります。
先にむし歯・歯周病治療を行う
むし歯や歯周病があるためにアライナー矯正が難しい場合は、先に口の中の状態を整えます。
次のような治療や管理を行い、矯正治療ができる状態になってから再度判断します。
- ✓ むし歯治療
- ✓ 歯周病治療
- ✓ 歯石除去
- ✓ 歯みがき指導
- ✓ 詰め物・被せ物の確認
- ✓ 歯ぐきの炎症管理
歯周病やむし歯があるからといって、永久にアライナー矯正ができないとは限りません。
まずは歯を動かせる土台を整えることが大切です。
治療ゴールを調整する
アライナー矯正で理想的な仕上がりを目指すのが難しい場合でも、治療ゴールを調整することで対応できることがあります。
たとえば、次のような考え方です。
- ✓ 前歯の見た目を中心に整える
- ✓ 噛み合わせの大きな改善は求めすぎない
- ✓ ワイヤー矯正ほどの移動量は目指さない
- ✓ 抜歯を避けた範囲でできる改善を目指す
ただし、見た目だけを優先しすぎると、噛み合わせに無理が出ることがあります。
「どこまで改善できるのか」「どこから先はアライナーでは難しいのか」「無理にアライナーで進めるとどんなリスクがあるのか」を治療前に確認することが大切です。
アライナー矯正ができるか判断するために必要な検査
アライナー矯正ができるかどうかは、見た目だけでは判断できません。
治療前には、次のような検査を行います。
- ✓ 口腔内写真
- ✓ 顔貌写真
- ✓ レントゲン撮影
- ✓ セファロ分析
- ✓ 歯周病検査
- ✓ むし歯の確認
- ✓ 噛み合わせの確認
- ✓ 口腔内スキャン
- ✓ 必要に応じたCT撮影
これらの情報をもとに、次のような点を判断します。
- ✓ 歯をどの方向に動かす必要があるか
- ✓ どれくらいスペースが必要か
- ✓ 抜歯が必要か
- ✓ アライナーで動かせる範囲か
- ✓ ワイヤー矯正が必要か
- ✓ 歯周病やむし歯のリスクはないか
- ✓ 治療後に安定しやすいか
「前歯だけ少し気になる」という場合でも、奥歯の噛み合わせや歯の根の位置まで確認することが重要です。
アライナー矯正を希望するときに相談すべきこと
アライナー矯正を希望する場合は、カウンセリングで次の点を確認しましょう。
- ✓ 自分の歯並びはアライナー矯正で対応できるか
- ✓ アライナー単独で治療できるか
- ✓ ワイヤー矯正の併用が必要か
- ✓ 抜歯が必要か
- ✓ アタッチメントはどこにつくか
- ✓ 顎間ゴムが必要か
- ✓ 治療期間はどのくらいか
- ✓ 追加アライナーの可能性はあるか
- ✓ 治療後の保定はどうするか
- ✓ できないことや限界は何か
特に大切なのは、「アライナー矯正でできること」だけでなく、「アライナー矯正では難しいこと」も説明してもらうことです。
メリットだけでなく、限界やリスクまで理解したうえで治療を選ぶことが、後悔を防ぐポイントです。
アライナー矯正が難しい症例でも、自己判断で諦める必要はありません
ここまで、アライナー矯正が難しい症例を紹介しました。
ただし、これらに当てはまるからといって、必ずアライナー矯正ができないとは限りません。
近年は、アライナー矯正の技術も進歩しており、アタッチメント、顎間ゴム、アンカースクリュー、補助装置、ワイヤー矯正との併用などによって、対応できる範囲が広がっているケースもあります。
一方で、無理にアライナー矯正だけで進めると、治療期間が長くなったり、仕上がりに限界が出たり、噛み合わせに問題が残ったりする可能性があります。
大切なのは、次の点を正しく診断することです。
- ✓ アライナー矯正で対応できる症例か
- ✓ ワイヤー矯正の方が適している症例か
- ✓ 併用した方がよい症例か
- ✓ 先に他の治療が必要な症例か
まとめ|アライナー矯正ができない症例は、診断によって判断されます
アライナー矯正は、目立ちにくく取り外しができる便利な矯正治療です。
しかし、すべての歯並びに対応できるわけではありません。
特に、次のような場合は、アライナー矯正が難しい、または慎重な判断が必要になることがあります。
- ✓ 歯のガタガタが強い
- ✓ 抜歯を伴う大きな歯の移動が必要
- ✓ 歯のねじれや回転が大きい
- ✓ 奥歯の噛み合わせを大きく変える必要がある
- ✓ 骨格的な受け口・出っ歯がある
- ✓ 重度の開咬や過蓋咬合がある
- ✓ 埋伏歯がある
- ✓ 歯周病が進行している
- ✓ むし歯が多い
- ✓ インプラントやブリッジがある
- ✓ 歯ぎしり・食いしばりが強い
- ✓ 装着時間を守れない
ただし、「アライナー矯正が難しい」と言われた場合でも、ワイヤー矯正、裏側矯正、アライナーとワイヤーの併用、先行治療、治療ゴールの調整など、別の選択肢がある場合があります。
アライナー矯正を希望する方は、まずは現在の歯並びや噛み合わせを詳しく確認し、自分の症例がアライナー矯正に向いているか相談してみましょう。
この記事の監修・執筆協力
“`上野スマイル歯科 院長
日本大学松戸歯学部卒業後、日本大学松戸歯学部矯正学教室に入局。1999年に日本矯正歯科学会認定医を取得し、2014年より上野スマイル歯科院長として矯正歯科治療に携わっています。
東京矯正歯科学会
マウスピース矯正
舌側矯正・MFT など
累計実績 約4,000件
2019年 インビザライン プラチナドクター
アライナー矯正は、目立ちにくさや取り外しやすさが魅力ですが、症例によってはワイヤー矯正や補助装置が必要になる場合があります。希望だけで判断せず、まずは歯並び・噛み合わせ・歯周状態を確認することが大切です。
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上野スマイル歯科では、患者さんの歯並び・噛み合わせ・ご希望に加えて、歯周病やむし歯の状態、装着時間を守れるかなども確認しながら、矯正治療の進め方をご説明します。